「せっかく資格を取ったのに、このまま今の仕事を続けるべき?それとも、新しい道に挑戦すべき?」
資格を取得した多くの方が一度は抱えるであろうこの悩み。今回は、長年勤めた会社を退職し、社労士として新たなキャリアをスタートさせる決意をされたユズキさんと、資格とキャリアについて研究している私さわだまいが、資格取得後のキャリアチェンジをテーマに、熱く語り合いました!
この対談では、資格取得をきっかけにキャリアチェンジを考えるに至った背景、その過程で抱える葛藤、そして新たな一歩を踏み出すための具体的なヒントや、キャリア形成を考える上で重要なフレームワーク、陥りやすいバイアスについて深く掘り下げます。
【自己紹介】それぞれのキャリアと資格取得の背景
対談にうつる前に、まずは自己紹介。ユズキさんからお願いします。
ユズキさん自己紹介

【お名前】
ユズキ迷走中(@40cara_com)
\ユズキさんのブログはこちら/
【職歴】
社会人歴30年
【取得資格】
FP2級
AFP
社労士(令和4年合格 その他登録)
【年齢】
50代
【家族構成】
ご主人、子育て終了

ユズキさん:私は現在50代に差し掛かる年齢で、高校を卒業してから30年近く、同じ職場で部署は異動していますがずっと事務系の仕事をしています。
2021年頃にFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得し、その勢いで2022年には社労士(社会保険労務士)の資格も取得しました。今はまだ社労士としての実務経験はありませんが、「その他登録」という形で社労士会に所属し、研修などを受けながら知識をアップデートしている状況です。
今日は皆さんと一緒に、キャリアについて考える良い機会にできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。
さわだまい自己紹介
さわだまい:今日は、資格取得後のキャリアチェンジという、多くの方が一度は直面するであろうテーマについて、ユズキさんと一緒に深く掘り下げていきたいと思います。

私の自己紹介もさせていただきますね。私、さわだまいは現在39歳で、フリーランスでライターとウェブ関係の会社でパート勤務をしています。以前、社労士事務所で補助者をしていた経験から、資格とキャリア、そして働き方というものに強く興味を持ち、この企画を立ち上げました。
どうぞよろしくお願いいたします。皆さんの質問やコメントもぜひお待ちしています。
ユズキさんのキャリアと資格取得まで
それでは早速、ユズキさんのキャリアと資格取得の経緯についてお聞きしましょう。
長い事務職……漠然とした不安の中で資格取得をめざす
さわだまい:ユズキさんは、2021年にコロナ禍にFPの資格にチャレンジされたとお伺いしましたが、当時、どのような心境だったのでしょうか?
ユズキさん:コロナ禍ではありましたが、コロナ禍が直接的なきっかけだったわけではないんですよね。もっと根本的なところで、長年、事務職でこれといって手に職もない状況で、「このままでは会社を辞めたら何も残らない」という強い不安を感じていました。
また、大学に進学できなかったことへのコンプレックスも、心のどこかにずっとあったんです。そこで、資格を取ることで、自分自身に自信をつけたい、自己肯定感を高めたいという強い思いがありました。

さわだまい:なるほど!とてもよく分かります。
私も事務職出身で、つぶしがきく業務内容でもなかったので「この会社を辞めたら、自分には何も残らないんじゃないか」という不安を常に抱えていました。資格取得は、そうした不安を払拭する一つの手段ですよね。
ユズキさん:子育てなどが忙しいときはそういうことも考えられないんですが、ちょっと時間ができたりすると、なんか頑張ってみようかなって思いますよね。
そんな感じで、まずは業務に多少関係のあったFP2級を取得しました。汎用的な内容でほんと取得して良かったと思います。
さわだまい:そうなんですね!AFPも取得されたということで、すごいです!
FP合格後、すぐに社労士に挑戦→合格!
ところで、ユズキさんはFPの資格取得後、間髪入れずに社労士の資格にも挑戦されたのですね。
ユズキさん:そうなんです。FPの資格を取得した勢いで、すぐに社労士の勉強を始めました。もともと、人事関係の仕事に少し関わったことがあったので、社労士の仕事に親和性を感じていたというのもあります。ただ、社労士の試験勉強は想像以上に奥深く、まさに沼にハマってしまったという感じでした(笑)。
さわだまい:難しい社労士の試験ですが、一発合格されてますよね!!!本当に素晴らしいです!合格された時の気持ちはどうでしたか?

ユズキさん:もう、本当に嬉しかったの一言です。試験の結果が出るまで、ドキドキして眠れない日々が続いたので、合格を知った時は、喜びでいっぱいでした。
ただ、合格したからといって、すぐに何かが変わるわけではありませんでした。でも、せっかく苦労して取得した資格なので、いつか必ず活かしたいという気持ちは強くありました。
さわだまい:資格取得は、あくまでスタート地点なんですよね。その後のキャリアをどう形成していくかが、非常に重要だと思います。

キャリアチェンジへの決意ときっかけ
病気がもたらした価値観の変化
さわだまい:ところで今回、ユズキさんは長年勤めた会社を退職し、社労士法人への転職を決意されたとのことですよね!おめでとうございます!!!どのような心境の変化があったのでしょうか?
ユズキさん:実は、資格を取得した時点では、すぐに転職するつもりは全くなかったんです。どちらかというと、定年退職後に、趣味程度に資格を活かせればいいかな、くらいの気持ちでした。しかし、今年の春に病気をしたことがきっかけで、価値観が大きく変化したんです。
さわだまい:ご病気がきっかけで、具体的にどのような変化があったのでしょうか?
ユズキさん:3ヶ月ほど休職したのですが、その間、自分の人生について深く考える時間を持つことができました。このまま今の会社にいても、5年後に健康でいられる保証はない。それなら、後悔しないように、今のうちにやりたいことをやっておこうと、強く思うようになったんです。
さわだまい:ご自身の健康状態や、今後の人生に対する真剣な思いが、キャリアチェンジの大きな動機になったのですね。
キャリアチェンジのチャンスを掴み取るために一歩踏み出す
ユズキさん:はい、そうです。それに、実務経験がないまま年を重ねてしまうと、社労士として活躍できるチャンスがどんどん減ってしまうのではないかという焦りも、正直なところありました。
さわだまい:確かに、年齢を重ねるほど、新しいことに挑戦するハードルは高くなるかもしれません。ユズキさんは、将来的には開業も視野に入れているのでしょうか?

ユズキさん:そうですね。まずは社労士法人でしっかりと実務経験を積み、ゆくゆくは独立して、自分の事務所を持ちたいと思っています。会社は理解があって副業で開業してもいいと言ってくれたんですが、まずはしっかりと働いて職場に貢献し、土台を築きたいです。
さわだまい:なるほど。まずは経験を積むという選択をされたのですね。
葛藤も 不安と期待が入り混じる心境
さわだまい:30年近くも勤めた会社を辞めるというのは、相当な決意が必要だったと思います。キャリアチェンジを決意する上で、葛藤はありましたか?
ユズキさん:もちろん、葛藤はたくさんありました。長年勤めた会社を辞めることへの不安、安定した給料がなくなることへの心配、そして、自分に本当に社労士の仕事が務まるのかという不安もありました。特に、夫も自営業なので、収入面での不安は大きかったです。
さわだまい:お金の問題は、キャリアチェンジを考える上で、避けて通れない大きな壁ですよね。
ユズキさん:本当にそうなんです。でも、それ以上に、自分自身の可能性に挑戦してみたい、後悔のない人生を送りたいという気持ちが勝りました。
さわだまい:実際に、社労士法人への転職が決まって、今はどのようなお気持ちですか?

ユズキさん:今は、期待と不安が入り混じっているというのが正直なところです。社労士としての実務経験はほとんどないので、本当にちゃんとやっていけるのか、という不安は常にあります。しかし、それ以上に、新しいことに挑戦できる喜びや、自分の可能性を試せるというワクワク感を感じています。
さわだまい:新しい環境に飛び込むのは、勇気がいることだと思いますが、ユズキさんのように、前向きに捉えている姿勢は素晴らしいと思います。

キャリアチェンジに踏み出せない人へ~経験こそが成長の糧~
さわだまい:もし、ユズキさんと同じように、資格は持っているけれど、なかなかキャリアチェンジに踏み出せない、一歩が踏み出せないという人がいたら、どのようなアドバイスをされますか?
ユズキさん:そうですね。私もまだ、キャリアチェンジをしたばかりで、これからどんなことが待ち受けているのか、未知数な部分も多いので、安易に「こうすればいい」とは言えない部分もあります。
ただ、一歩踏み出すことが大切だと思います。
いきなり転職したり独立したりするのはリスキーですよね。わたしも病気がなければ、転職にはなかなか踏み出せませんでした。「すぐにジョブチェンジしろ!」なんていいませんが、何かしらその世界と関わりを持ち続けることはとても重要だと思います。

たとえば、社労士であれば登録をしてみる、ボランティアをしたり、勉強会に参加するだけでも違います。可能なら副業で活動を開始してみるなど、自分のペースで始めてみることをおすすめします。
さわだまい:なるほど。たしかにそうですね!
経験することの大切さ、これは本当に私もそう思います。資格を取っただけでは、自分に本当に合っているのか、やりたいことなのかどうかは、なかなか分からないものです。まずは、様々なことにチャレンジしてみることで、自分の適性や興味関心を深く知ることができますよね。
ユズキさん:その通りだと思います。今回の転職が成功するかどうかは、まだ分かりません。もしかしたら、後悔することもあるかもしれません。でも、まずはやってみないと何も分からない。仮に失敗したとしても、それはそれで、次のステップに繋がる経験になると思っています。
さわだまい:本当にそうですね。今回の対談を通して、私も改めて、キャリアチェンジについて深く考える、良いきっかけになりました。
「いいキャリアの育て方」から見る資格とキャリアチェンジ

ここで少しお時間をいただきます。私が最近読んだ本からキャリア形成のヒントが得られたので紹介させてください。



私も聞きますね
青木努さんの著書『いいキャリアの育て方』では、キャリアを5つのステップで整理しています。
キャリアの5つのステップ


なるほど!と思ったので、ぜひ一緒に見ていきましょう!



良いキャリアを築くには、5つの「資」が重要です。
- 資格を得る(広義の資格) → やりたいことへの挑戦権を得る
- 資源を活かす → 体力、時間、知識を使う
- 資質を伸ばす → 自分の得意・不得意を活かす
- 資本に変える → 仕事の経験を積む
- 資産を蓄積する → 働く理由となる価値を得る
このステップを踏みながら、キャリアを長期的に考えることが大切です。



それぞれに項目があるのですが、「資格を取得したけど踏み出せない」という悩みは①「資格を得る」の部分だと思うので、今回はそちらに注目してお話します。
関心の幅を広げることの重要性
キャリアを考えるうえで最初に必要なのは「関心の幅を広げること」です。
人は自分の知っている範囲でしか選択肢を持つことができません。そのため、新しい経験や知識を得ることで、自分にとって最適なキャリアの方向性を見出すことができます。



本やテレビでしか仕事を知らない子どもは、「将来は先生か病院の先生、お花屋さんやユーチューバー、など。テレビで見た職業に就くしかない」と考えるますよね
書籍では、ある国へ行ったことがある状態とない状態では、その国に対する感度が大きく異なると説明されていました。



たしかに、いろいろなことを経験すると見える世界が変わってきます
関心の幅が広がることで、自分に合った仕事が見つかる可能性が高まるんですね。
実践方法:


・興味のある分野について読書や学習をする
・旅行や異業種の人と話す
・異なる経験を積む副業やボランティアで実際に働いてみる
・資格を取ってみる



なるほどたしかに!「資格を取ってみる」というのも、関心の幅を広げる1つの手段ですよね
「自己理解」には、自己分析とともにフィールドワークとネットワークが必要


自己分析はキャリアを考えるうえで大事ですが、それだけでは足りません。多くの人が「自分に合う仕事」を探すために何度も自己分析をしますが、本当に自分が好きなことや得意なことは、経験してみないとわからないことが多いのです。
自己分析の限界
- これまでの経験だけで考えると、新しい分野に挑戦する機会を逃すことがある
- 「向いているはず」と思っていても、実際にやってみると合わないことがある
- 一人で考えていると、意外な選択肢に気づけないことがある



人に評価されてはじめて、自分の一面に気づけるってこともありますね
実践的なアプローチ
- 少しでも興味のある仕事を、短期間でも試してみる
- 実際に働いている人と話して、仕事のリアルな情報を聞く
- 仕事の現場に足を運び、自分に向いているかどうかを体験する



自己分析をすることは大切ですが、それだけでなく、実際に動いて試すことがより良いキャリア選択につながります。
良い意思決定をするには、自己理解+企業理解・職種理解も重要


キャリアを考えるとき、「自分に合っている仕事は何か?」と自己分析することが大切ですが、それだけでは不十分です。どんなに自己理解を深めても、実際にその職種や企業で働いてみないとわからないことが多いからです。



仕事の内容や働く環境は、想像と異なることが多いし、自分が得意だと思っていたことが、実際の仕事では活かせないこともありますよね
働く会社の文化や人間関係が、自分の適性に合っているかどうかが重要です。
実際に働いている人の話を聞いたり、(インタビューや座談会に参加する)インターンや職場見学を利用する(短期間でも体験してみる)、業界研究をする(業界のトレンドや将来性をチェック)のも大切です。



自己理解を深め、人の話やさまざまな情報から業界への理解が深まることで、いつの間にか一歩踏み出せるようになるのではないでしょうか!
キャリアチェンジにおける「意思決定」


キャリア形成において、単に資格を取るだけではなく、適切な意思決定をすることが大切です。そのためには、以下の5つの要素を意識しましょう。
- 選択肢を増やす
- 仕事の選択肢、副業、資格取得など、可能性を広げる
- 資格だけに依存せず、実務経験やネットワークも活用する
- 選択基準を持つ
- 世間の価値観ではなく、自分の価値観を大切にする
- 年収、働き方、やりがいなど、何を優先するかを明確にする
- 判断力を養う
- 信頼性の低い情報やバイアスに惑わされない
- 具体的なデータや実際の経験を元に判断する
- 決断力を持つ
- 未知を恐れすぎない
- ある程度のリスクを受け入れながら前に進む
- 選んだ道を正解にする努力をする
- 自分の選択を正当化するのではなく、選んだ道をより良いものにする努力をする



いいキャリア形成のためには、広い視野で深い判断力で、恐れすぎない決断力を持って物事を決め成功をつかんでいくことが大切なんですね!
正常な判断をゆるがす!?資格を持つ人が陥りやすいバイアス





資格を持っていることで気づかないうちに思い込みをしてしまうことがあります。この思い込みを知っておくと、より自由に仕事を選ぶことができます。
1. サンクコスト(埋没費用)バイアス
「せっかく時間とお金をかけて資格を取ったのだから、それを活かさなければ損だ」と考え、他の可能性を見失ってしまうことです。資格があっても、それが最適な道とは限りません。
対策: 資格取得にかかったコストを気にしすぎず、幅広い選択肢を持つこと。
2. 損失回避バイアス
「資格を活かすために転職したいけど、今の安定した職を失うのは怖い」といった心理が働き、新しいチャンスを逃してしまうことです。
対策: 目先の損失ではなく、長期的なキャリアの成長を考える。



年収が一時的に大きくかわる、なんていう場合はこのバイアスに陥っても仕方ない気がします
3. チェリーピッキング(都合の良い情報だけを見る)
SNSなどで「この資格を取れば成功できる!」というポジティブな情報ばかり集めてしまい、資格の現実的な側面を見落とすことです。
対策: ネガティブな情報や失敗例も積極的に調べる。
4. バンドワゴン効果(流行に流される)
「みんながこの資格を取っているから、自分も取ったほうがいい」と考え、本当に自分に必要かどうかを判断せずに資格を取得することです。
対策: 「なぜこの資格が自分に必要なのか?」をしっかり考えた上で行動する。
自己効力感:キャリアチェンジための心のエンジン


さいごに、キャリアチェンジに踏み出すためには、「自己効力感」も大切です。自己効力感とは、「自分ならできる」という感覚のことです。自己効力感を高めるためには、以下の4つの要素が重要になります。
- 自分の過去の成功体験:過去に成功した経験を振り返り、自信につなげる
- 他者の成功体験:自分と似た状況の人が成功している事例を知る
- 他者からの肯定的な言葉:周囲から励ましの言葉をもらう
- 良好な体調:心身ともに健康な状態を保つ



以上の要素を意識的に取り入れることで、自己効力感を高め、より積極的にキャリアを切り開いていくことができるようになります。



納得する部分も多くありました!参考にします!
経験を糧に、自分らしいキャリアチェンジを
今回の対談を通して、資格取得後のキャリアチェンジは、決して簡単なことではないということが改めて分かりました。しかし、勇気を持って一歩踏み出すことで、新たな可能性が開けることもまた事実です。
ユズキさんのように、病気をきっかけに価値観が大きく変わる人もいれば、今の仕事に違和感を覚え、新しいキャリアを模索する人もいるでしょう。資格を活かす道は一つではなく、様々な選択肢があります。
大切なのは、経験を財産にし、常に学び続け、自分自身で考え、意思決定し、自分にとって最良のキャリアを築いていくことではと感じました。
この対談が、キャリアチェンジについて悩んでいる皆さんの背中を押す一助となれば、大変嬉しく思います。



最後に、ユズキさんの今後のご活躍を、心から応援しています!