「キャリアの棚卸しをしましょう」と言われてノートを開いたものの、何を書けばいいか分からず、数分で閉じてしまったことはありませんか。
こんにちは、まいです。国家資格キャリアコンサルタントとして、人の「働く」を支える仕事に携わっています。
そんな私も、初めて自分の経験を整理しようとしたときは、真っ白なページを前に固まりました。書けることが何もない気がしたんです。
でも今振り返ると、経験がなかったというより、「人に誇れる実績を書かなければいけない」と考えて、書く前に選別していたところがあったと思います。
ブログ案内犬しろちゃん棚卸しって、今までやってきたことを整理するんじゃないの?



そうだよ。ただ、立派な実績だけを集める必要はないんだよね。普段やっていたことや、好きだったことも並べてみると、これからの選択肢を考える材料になるんだよ。
この記事では、これまでの経験を振り返り、興味や強み、これから試してみたいことを整理する方法を、4つのステップで紹介します。
転職や資格取得を決めている方だけでなく、「今のままでいいのかな」「何か始めたいけれど、何をしたいか分からない」という方も、できそうなところから使ってみてください。
キャリアの棚卸しは、立派な実績を集めるためだけのものではない
キャリアの棚卸しは、これまでの仕事や経験、学んだことなどを振り返って整理することです。応募書類を作るために行う場合もあれば、自分の強みや今後の方向性を考えるために行う場合もあります。
ただ、「成果を出したこと」「人に評価されたこと」だけを書こうとすると、手が止まってしまうことがあります。
「これは誰でもできる仕事だし」
「ずいぶん前のことだから、今さら書いても意味がないかな」
そんなふうに一つずつ外していくと、経験はあるのに、ノートには何も残らないんですよね。
そこで今回は、まず経験を並べる時間と、その経験をどう活かすか考える時間を分けてみます。
最初から「強みになるか」「仕事に使えるか」を決めなくて大丈夫です。書き出したものを眺めながら、後で少しずつ考えていきましょう。


用意するものは、ノートとペン。スマホのメモでも、付箋でも構いません。一度で完成させようとせず、まずは10分くらい、数日に分けて取り組むつもりで始めてみてください。
STEP1 やってきたことを、具体的な行動で書き出す
最初は、「何をしていたか」を書き出します。得意だったか、成果が出たかは、いったん脇に置いておきましょう。
書きにくいときは、職種名だけで終わらせず、実際にどんな作業をしていたかまで分けてみると、思い出しやすくなります。
たとえば、事務の経験なら、次のように書けます。以下は書き方の例です。
| 大まかな書き方 | 事務職をしていた |
| 行動に分けた書き方 | 請求書の内容を確認して入力していた 新人が迷いやすい手順をメモにまとめていた 電話で用件を聞き、担当者に引き継いでいた |
件数や人数が分かれば書いてもよいですが、数字がなければ書けないわけではありません。「毎月」「忙しい時間帯に」「担当者が不在のときに」といった状況も、経験を具体的にする手がかりになります。
できれば、その中で自分なりに気をつけていたことも添えてみてください。
「間違えやすい項目は、入力後にもう一度確認していた」「初めての人にも伝わるよう、専門用語を言い換えていた」など、当たり前にやっていた工夫も含めて大丈夫です。
仕事以外の経験も、書いてみてください
今後の方向性を考えるための棚卸しなら、対象は職歴だけに限りません。
- PTAや自治会で、予定の調整や会計、資料作成をしたこと
- 家族の介護に関する情報を調べたり、手続きを進めたりしたこと
- 子どもの予定や学校との連絡を管理していたこと
- 家計を記録し、支出を見直してきたこと
- 趣味で続けていることや、ブログ・SNSで発信してきたこと
- 資格の勉強で工夫したことや、途中まで学んだこと
これらがそのまま職務経験として評価されるとは限りませんが、自分の関心や行動の特徴を知る材料にはなります。
私自身、資格の勉強をしてきたことは職歴ではありません。でも、限られた時間でどう進めるか考えたり、分からないことを調べたりした経験を振り返ると、自分なりの取り組み方が見えてきました。
最後までやり遂げたことだけでなく、途中でやめたことも書いて構いません。何にひかれて始めたのか、どこで続けにくくなったのかも、後から考える材料になります。
STEP2 「またやりたい」と感じることに印をつける
ある程度書けたら、少し時間を置いて眺めてみます。そして、「またやってみたい」「この部分は嫌いではなかった」と思うものに、○をつけてみてください。
ここでは、得意かどうかだけで選ばなくて大丈夫です。
上手にはできなかったけれど面白かったこともあれば、周りから頼られていたけれど、自分には負担が大きかったこともあると思います。
「できること」と「これからもやりたいこと」を、少し分けて見てみる。そのためのステップです。
反対に、「今はできれば避けたい」と思うものには×をつけます。迷うものは△でも、空欄でも構いません。





○も×もつかない、どっちでもないものはどうしたらいい?



空欄で大丈夫だよ。すぐには思い出せないこともあるし、条件によって気持ちが変わることもあるから。印がつかない理由まで、今決めなくてもいいんだよね。
「仕事そのもの」と「そのときの環境」を分けてみる
○や×をつけたら、余裕があれば理由をひと言添えてみてください。
たとえば、電話対応に×がついていても、人と話すこと自体が嫌だったのか、ひっきりなしに電話が鳴って作業が中断することがつらかったのかでは、見えてくるものが違います。
資料作成に○がついた場合も、文章を考えるのが好きだったのか、見やすく配置することが楽しかったのか、人の役に立ったと感じられたことがうれしかったのかで、その先の選択肢は変わってきます。
「これは好き」「これは嫌い」で終わらせず、どの部分に気持ちが動いたのかを見ていくと、自分に合う条件を考えやすくなります。
STEP3 「できる・やりたい・求められる」の重なりを探す
次は、書き出した経験を、3つの視点から眺めてみます。これは自分を分類して答えを出す診断ではなく、選択肢を整理するための考え方です。


- できること:実際に経験したことや、自分で対応できること。助けがあればできることは、その条件も添えます。
- やりたいこと:また取り組みたいことや、もう少し知りたいこと。はっきりした目標になっていなくても構いません。
- 求められること:人から頼まれたことや、求人・仕事の依頼などで実際に必要とされていること。
一つの経験が、複数の輪に入っても大丈夫です。反対に、3つすべてが重なるものを、無理に探す必要もありません。
「できるし、求められているけれど、今後は少し減らしたい」「興味はあるけれど、仕事として何を求められるのかはまだ知らない」。そんな状態が見えるだけでも、次に何を確かめたいかが分かります。
「やりたい」と「求められる」が重なったら、必要な準備を確かめる
興味があって、仕事としての必要性もありそうだけれど、今の自分には知識や経験が足りない。そんなときは、学び直しが選択肢になります。
ただ、「あとは資格を取れば大丈夫」とは限りません。求人で求められているのが資格なのか、実務経験なのか、作品や成果物なのかによって、準備の仕方は変わります。
まずは、気になる仕事の募集内容や、実際に働いている人の話を見てみる。そのうえで、資格の勉強、短い講座、作品づくり、小さな実践など、自分に必要な方法を考えます。
もちろん、純粋に好きだから学ぶことにも意味はあります。ただ、仕事につなげたい場合は、「何を学びたいか」と「その仕事で何が必要か」の両方を確認すると、準備の方向を決めやすくなります。
重なりが見つかっても、今の暮らしに合うかを考える
できること、やりたいこと、求められることが重なっていても、働く時間や場所、収入などの条件が合わなければ、今すぐ選ぶのは難しいかもしれません。
使える時間、通勤できる範囲、家族との予定、必要な収入、学びにかけられる費用。今の自分が大切にしたい条件も、横に書き添えてみてください。
条件があることは、意欲が足りないということではありません。無理なく続けられる形を考えるための、大切な材料です。
社労士試験をやめた経験も、今の自分につながっている
私は社労士試験に3回挑戦して、合格できないまま受験をやめました。
当時つらかったのは、不合格そのものだけでなく、「ここまで勉強したのに、やめていいのだろうか」と迷っていたことです。
自分の気持ちを整理してみると、できるようになりたい気持ちはあっても、労働法の勉強を「またやりたい」とはあまり思えていなかったことに気づきました。
学ぶことがいつも楽しくなければいけないわけではありません。ただ私の場合は、続けることに使う時間や気持ちと、その先に進みたい方向を見直す必要があったのだと思います。
受験をやめても、学んだ知識までなくなるわけではありませんでした。人の相談に関わりたいという関心も含めて、今のキャリアコンサルタントとしての活動につながっています。
棚卸しは、続ける理由を見つけるためだけでなく、何を残して、何を選び直すかを考えるためにも使えます。
STEP4 次の半年を見据えて、まず試すことを1つ決める
最後に、これから半年くらいで確かめてみたい方向を考え、そのために最初に試すことを一つ選びます。半年という期間は目安なので、自分が考えやすい長さで構いません。
ここで決めるのは、大きな目標でなくても大丈夫です。「転職する」「資格に合格する」と決める前に、判断に必要な情報を一つ集めるところからでも始められます。
- 気になる仕事の求人を3件見て、仕事内容と必要な経験をメモする
- その仕事をしている人のインタビューを一つ読む
- 持っている資格の知識を、今の仕事で使えそうな場面を一つ探す
- 興味のあるテーマで、短い文章や資料を一つ作ってみる
- 資格が必要だと感じたら、受験要項と学習内容を確認する
たくさん思いついた場合は、残りを消す必要はありません。候補として残したうえで、今週または来週に試すものを一つ選んでみてください。
たとえば、「日曜日に15分だけ、気になる求人を3件見る」と、取り組む場面まで決めると、行動に移しやすくなります。
そして試したあとは、「思っていたより面白かった」「この条件だと難しそう」「もう少し詳しく知りたい」といった感想を、ノートにひと言足しておきます。
試してみて違うと分かったことも、次に選ぶための情報です。最初に決めた方向を、ずっと守り続ける必要はありません。
半年後や暮らしが変わったタイミングで、もう一度見返してみてください。その間にも気づいたことを書き足して、今の自分に合わせて更新していければ十分です。
キャリアの棚卸しで、手が止まったときは
「書くことがない」と感じる
過去の仕事をまとめて思い出そうとすると、出てこないこともあります。そんなときは、ある一日の流れを、朝から順番に書いてみてください。
出勤して最初に何を確認していたか。誰と連絡を取っていたか。帰る前に何を片付けていたか。「仕事」とひとまとめにしていた中から、具体的な行動が出てくることがあります。
仕事の経験が少ない場合も、最近の一週間にやったことや、誰かに頼まれたことから始めて構いません。思い出しにくいことや、書きたくない出来事まで、無理に掘り起こす必要はありません。
全部「大したことではない」と思ってしまう
自分にとって当たり前のことは、自分だけでは特徴に気づきにくい場合があります。
安心して話せる相手がいれば、「私が普段工夫していると思うことはある?」「どんなときに頼みやすいと思う?」と、具体的に聞いてみるのも一つの方法です。
相手の評価をそのまま正解にする必要はありません。「そう見えるんだ」と受け止めて、自分の実感と照らし合わせてみてください。
大きな強みを見つけようとしなくても、「この場面では、こういう工夫ができていた」と分かれば、それも棚卸しの成果です。
「またやりたい」が見つからない
○がつかないからといって、自分には興味がない、向いていることがないと決めなくて大丈夫です。まだ経験していないことの中に、関心を持てるものがあるかもしれません。
まずは、「この条件なら、もう少しやりやすかったかもしれない」「この部分はそれほど嫌ではなかった」と、少し答えやすい問いに変えてみてください。
×が多い場合も、仕事内容そのものが合わなかったのか、時間や人間関係などの条件が負担だったのかを分けると、次に避けたいことが整理できる場合があります。
印のつき方だけで、その理由を決めつける必要はありません。今は考えること自体が負担なら、ノートを閉じて、別の日に戻ってきても大丈夫です。


キャリアの棚卸しは、今あるものから選択肢を考える時間
今回紹介した流れを、もう一度まとめます。
- やってきたことを書き出す。実績の大きさを決めず、仕事以外の経験も含めて具体的に書く。
- 「またやりたい」に印をつける。得意かどうかとは分けて、好きだった部分や避けたい条件を見る。
- 「できる・やりたい・求められる」を整理する。今の暮らしの条件も添えて、確かめたいことを探す。
- まず試すことを一つ選ぶ。小さく取り組んで、分かったことを次の判断に使う。
キャリアの棚卸しは、自分に点数をつける作業ではありません。今ある経験や関心を並べて、これからどう使いたいかを考える時間です。
整理してみて、学びたいことが見つかれば、資格や学び直しを選んでもいい。すでに持っているものを使えそうなら、まず試してみてもいい。
今の仕事を続けながら、担当することや取り組み方を少し変えてみる、という選択肢もあります。
最初からノートを一冊埋める必要はありません。最近やったことを三つ書くくらいから、自分のペースで始めてみてください。
一人では整理しにくいときは、一緒に考えてみませんか
「経験は書き出せたけれど、そこから何が分かるのか分からない」
「できることはある。でも、それをこれからも続けたいのか迷っている」
「資格を取りたい気持ちはあるけれど、今の自分に必要かを整理したい」
そんなときは、キャリア相談でお話しいただけます。
仕事だけでなく、家庭や学び、趣味などの経験も伺いながら、興味や強み、大切にしたいことを一緒に整理します。そのうえで、今の暮らしに合う次の一歩を考えていきます。
棚卸しを完成させてから来ていただく必要はありません。「何を書けばいいか分からない」というところからでも大丈夫です。











