「あなたは何がしたいの?」
この質問に、すぐ答えられますか。
何かを変えたい気持ちはある。でも、転職したいのか、資格を取りたいのか、今の仕事を続けながら別のことを始めたいのか、自分でもよく分からない。
そんなとき、「まず、やりたいことを決めないと」と思うほど、動けなくなることがあります。
こんにちは、まいです。国家資格キャリアコンサルタントとして、人の「働く」を支える仕事に携わっています。
私自身も、最初から今の働き方を目指して、一直線に進んできたわけではありません。そのときの暮らしや家族の状況、出会った仕事に合わせながら、少しずつ選び直してきました。
だから、「やりたいことを決めてから動く」という順番だけではなく、少し試してみたあとで、自分の興味や進みたい方向が分かってくることもあると思っています。
ブログ案内犬しろちゃんやりたいことが決まっていなくても、始めていいってこと?



うん。「ちょっと気になるから知ってみる」くらいからでもいいんだよね。今日は、そんな考え方のヒントになるキャリア理論と、暮らしの中で試せることを紹介するね。
「やりたいことを決めなきゃ」と思うほど、動けなくなることがある
子どものころから、「将来の夢は?」「目標を立てよう」「そこから逆算して計画しよう」と言われてきた方も多いと思います。
目標があることで、取り組むことがはっきりする場合はあります。資格試験のように、期限や必要な準備が見えやすいものでは、計画が助けになることもありますよね。
ただ、これからの働き方まで、最初から具体的に思い描けるとは限りません。
結婚や出産、家族の事情、勤務先の変化などによって、以前は選べた働き方が難しくなることもあれば、逆に新しい選択肢が出てくることもあります。
まだ知らない仕事について、「自分はそれをやりたいのか」と聞かれても、判断する材料が足りない場合もあると思います。
だから、やりたいことを言葉にできない状態を、それだけで意欲や能力の不足と捉えなくてもいいのではないでしょうか。
答えを出す前に、知ったり、触れたり、話を聞いたりする時間があってもいい。そう考えると、少し取り組みやすくなることがあります。
計画的偶発性理論とは、予定外の出来事を学びや機会につなげる考え方
この考え方のヒントになるのが、ミッチェル、レヴィン、クランボルツが1999年の論文で示した「計画的偶発性理論(Planned Happenstance)」です。
キャリアに影響する予期しない出来事に目を向け、自ら探索しながら、そうした出来事を学びや新しい機会につなげていこうとする考え方です。
たとえば、話を聞きに行った先で、それまで知らなかった仕事を知る。頼まれて手伝ったことから、自分の関心に気づく。学んだ内容が、想定していなかった場面で役立つ。
こうしたことは、最初に立てた計画だけでは捉えきれない、キャリアの広がり方だと思います。


目標を持ちながら、途中で選び直してもいい
私がこの考え方を知って気持ちが楽になったのは、計画どおりに進むことだけを、正解にしなくてもいいと思えたからです。
今の目標に向かって取り組むことと、途中で出会った選択肢を検討することは、両立できます。
実際に学んでみたら、別の分野のほうに興味があると気づくかもしれません。暮らしの状況が変わって、違う働き方のほうが合うようになることもあります。
そのときに、「最初に決めたことと違うから」とすぐに候補から外さず、今の自分に合うかを考えてみる。私は、そんなふうに日々の選択に取り入れたいと思っています。
偶然を活かすために、できる範囲で接点を増やしてみる
予定外の出来事に目を向けるといっても、何もせずに待っていれば、希望する仕事が見つかるという話ではありません。
少し気になることを調べる、人の話を聞く、何かを作ってみる。そうした行動が、それまで知らなかった情報や経験との接点になることがあります。
ただ、行動すれば必ずよい機会に出会えるわけではありません。使える時間やお金、周囲の支えなどによって、動きやすさも違います。
家と職場の往復が中心でも、そこで新しい役割を知ったり、人との会話から興味が広がったりすることはあると思います。遠くへ出かけたり、人脈を広げ続けたりしなければいけないわけではありません。
私がおすすめしたいのは、今の生活の中で、無理なく増やせる接点を一つ考えてみることです。
いつもは読まないテーマの記事を読む、同僚に仕事の工夫を聞く、興味のある講座の内容だけ見てみる。そのくらいからでも、新しく考える材料は増やせます。
偶然を機会につなげる5つのスキル
原論文では、偶然の出来事を活かすためのスキルとして、好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・リスクテイキングの5つが挙げられています。
ここからは、この5つを私なりに、日常で試せる行動に置き換えて紹介します。全部を身につけてから始める必要はありません。


1.好奇心:気になることを、少し知ってみる
名前だけ知っている仕事について調べる。気になった記事を読む。人がどんな工夫をしているのか聞いてみる。
「自分の仕事に役立つか分からない」と、最初から選別しすぎず、少し知ってみる時間をつくります。そこからもっと知りたいことが出てきたら、次に進んでみればいいと思います。
2.持続性:うまくいかなかったときに、方法を見直してみる
一度うまくいかなかったからといって、その経験だけで「自分には無理」と決めず、方法を変えたらどうかと考えてみる。
たとえば、毎日1時間の勉強が続かなかったなら、取り組む量や時間帯を調整してみる。分からないまま進めなくなったなら、人に聞いてみる。
続けることは、同じ方法で我慢し続けることとは限りません。今も取り組みたいことなのかを確かめ、必要なら休んだり、方向を変えたりしていいと思います。
3.柔軟性:以前の決定を、今の自分で見直す
「前に決めたから」という理由だけで続けていることがあれば、今も同じ気持ちなのか、暮らしの条件に合っているのかを確認してみます。
資格を取ることを目標にしていたけれど、実際に調べると、先に仕事の経験を積む方法もあるかもしれない。そんなときに、別の進み方も候補に入れてみることです。
4.楽観性:できそうな条件も探してみる
「きっとうまくいく」と無理に思い込む必要はありません。
難しい理由が見えているなら、「短い時間ならどうか」「助けを借りられたらどうか」と、取り組めそうな条件も一緒に考えてみます。
不安があるままでも、確かめられることが一つ見つかれば、それを次の行動にできます。
5.冒険心:結果が決まっていないことを、小さく試す
リスクテイキングは「冒険心」と訳されることもあります。ただ、生活を大きく変えたり、高額な費用をかけたりする必要はないと私は考えています。
初めてのテーマで文章を書いてみる。参加したことのない勉強会で話を聞いてみる。できるか分からないことに、無理のない範囲で触れてみる。
「合わなかったら、そこで見直せる」という大きさなら、取り組みやすくなることもあります。
私のキャリアも、最初の計画どおりではありませんでした


私が本気で目指していた資格の一つに、社労士があります。3回受験して、合格できないまま受験をやめました。
当時は、何年もかけた計画が思うように進まなかったことを、失敗として受け止めていました。
でも、社労士の資格を取れなかったからといって、それまで学んだことまで消えてしまうわけではありませんでした。労働法や社会保険の知識は、社労士補助の仕事にもつながりました。
子育てとの両立を考えて、在宅で文章を書く仕事にも取り組んできました。資格について学んだことや、勉強で悩んだ経験は、記事を書くときの材料になりました。
その後の経験も重なって、今はキャリアコンサルタントとして、人の働き方やこれからの選択について考える仕事に関わっています。
今の仕事は、20代の私が最初から具体的に思い描いていたものではありません。
だからといって、全部が偶然だったとも思いません。出会った選択肢の中で、自分なりに考え、学び、選んできたこともあります。
予定していなかった出来事と、そのときどきの自分の選択が重なって、今につながっている。振り返ると、そういう感覚のほうが近いです。
計画が変わったときに、過去を全部なかったことにしなくてもいい。残っている経験や知識を、別の形で使える場合もあるのだと思います。
やりたいことが分からないときに試せる、3つの小さな行動


ここからは、今の暮らしの中で取り組めそうな例を3つ紹介します。全部やる必要はないので、気になるものを一つ選んでみてください。
1.興味の「かけら」を一つ、確かめてみる
「好きな仕事」と言い切れるものがなくても、最近つい読んでしまう記事や、話を聞いてみたい人はいないでしょうか。
そのテーマの本を少し読む、仕事の内容を調べる、短い動画を一つ見る。まずはそのくらいでも構いません。
見たあとは、「どこが気になったか」「もっと知りたいか」「想像と違ったか」をひと言残しておきます。一度触れただけで、自分の適性や興味を確定する必要はありません。
2.いつもと少し違う話に触れてみる
オンラインの勉強会、地域の集まり、知り合いとの会話などで、普段あまり聞かない仕事や活動の話に触れてみます。
積極的に自己紹介をしたり、人脈を作ったりすることまで目標にしなくても大丈夫です。まずは聞くだけでも、新しく知ることはあると思います。
参加が難しければ、インタビュー記事を読む方法もあります。使える時間や気持ちの余裕に合う形を選んでください。
3.「自分には無理」と思っている理由を分けてみる
「人前で話すのは苦手」「文系だからITは難しそう」。そう思うことがあれば、具体的にどの部分が難しいと感じるのかを考えてみます。
大勢の前で話すことと、一人に説明することは違います。ITも、仕事に必要な道具を使うことと、専門的な開発をすることでは、取り組む内容が違います。
一方で、時間や費用など、今すぐには変えられない条件もあります。難しさを全部「思い込み」で片付けず、変えられそうな部分と、今は大切にしたい条件を分けてみてください。
「この範囲なら試せそう」が見つかれば、そこから始められます。見つからなければ、今は候補として残しておくだけでも構いません。
経験の棚卸しと、小さく試すことを行き来してみる
予定外の選択肢に目を向けることと、これまでの経験を整理することは、一緒に進められます。
経験を振り返って、「人に分かりやすく説明することは好きだった」と気づく。その感覚を手がかりに、短い文章を書いてみる。試してみて、「書くより話すほうが好きかもしれない」と分かることもあります。
こんなふうに、振り返ることで試したいことが見つかり、試すことで自分について分かることが増えていきます。
- 振り返る:これまでの経験や、興味、大切にしたい条件を整理する。
- 小さく試す:気になることに触れて、新しい情報や経験を得る。
- 見直す:分かったことをもとに、続けるか、変えるか、いったん置くかを考える。
棚卸しを完璧に終えてからでないと動けないわけでも、動き続けないと答えが出ないわけでもありません。今の自分に取り組みやすいほうから始めて、行き来していけばよいと思います。
新しく学ぶことだけでなく、これまでの資格や経験を捉え直すことについては、こちらの記事でも書いています。
やりたいことが分からない今からでも、選べることはある
この記事で伝えたかったのは、最初から完成したキャリアプランを持っていなくてもよい、ということです。
少し知ってみる。話を聞いてみる。今ある知識を使ってみる。その経験から、自分の関心や大切にしたいことが分かってくる場合もあります。
計画どおりに進まなかった経験に、今すぐ意味を見つける必要もありません。ただ、そこで学んだことや感じたことが、後から別の選択につながる可能性はあります。
私自身も、最初に目指していたものとは違う道を歩いていますが、その途中で得た経験が、今の仕事の中に残っています。
「やりたいことが決まっていない今の自分」からでも、確かめられることはある。
何か試してみたいと思えたら、無理のないことを一つ。まだその気持ちになれなければ、気になるものをメモしておくところからでもいいのだと思います。
何から考えればいいか迷ったら、一緒に整理してみませんか


「いろいろ気になるけれど、どこから始めればいいか分からない」
「今の暮らしの中で、どんな選択肢があるのか考えたい」
「資格を取ることが、自分の次の一歩になるのか迷っている」
そんなときは、キャリア相談でお話しいただけます。
これまでの仕事や学び、家庭や趣味の経験も伺いながら、興味や強み、大切にしたい条件を整理します。そのうえで、今の自分に合う選択肢や、小さく試せることを一緒に考えていきます。
やりたいことや相談内容が、はっきり決まっていなくても大丈夫です。
参考文献
Mitchell, K. E., Levin, A. S., & Krumboltz, J. D.(1999). Planned Happenstance: Constructing Unexpected Career Opportunities. Journal of Counseling & Development, 77(2), 115–124.











